本日はプロマネをテーマに、マスタースケジュールの作成方法について扱います。
マスタースケジュールを作成できることは、プロジェクトを運営するうえでの必須スキルの1つなので、この記事を通じて是非ポイントを押さえて頂ければと思います。
それでは見ていきましょう。
マスタースケジュールとは何か?ロードマップやWBSとの違いは?
マスタースケジュールはプロジェクト管理において作成する主要ドキュメントの1つであり、プロジェクト内で実施する各タスクの開始/終了のタイミングや、マイルストーン、タスク間の依存関係等を表して、プロジェクト全体や各フェーズの具体的な計画を可視化したものです。
マスタースケジュールは”マスケ”と略されることもあります。
マスタースケジュールと混同しやすい概念として、ロードマップやWBSが挙げられるので、それぞれの違いや位置づけについて見てみましょう。
■ ロードマップ
ロードマップとは、数年単位などの長期スパンで、ハイレベルな観点から長期目標の達成に向けた道筋を描いたものであり、マスタースケジュールよりも上位概念に位置し、粗い粒度で作成します。
■ WBS(Work Breakdown Structure)
WBSとは、日次・週次等の単位の短期スパンで、いつ・誰が・何をするかといった個々の具体的な作業を定義したものであり、マスタースケジュールよりも下位概念に位置し、細かい粒度で作成します。
マスタースケジュール作成上のポイント
プロジェクトでは様々なタスクが走りますので、マスタースケジュールの作成が疎かになると、進め方が行き当たりばったりになって大幅な手戻りや遅延を生じたり、場合によってはプロジェクトそのものが破綻しかねません。
従って、プロジェクトを適切に運営するには、その初期段階でマスタースケジュールをしっかり作り込むことが必要なので、その作成上のポイントについて解説します。
ドキュメント化のための小手先のテクニックではなく、計画を立案する上でのポイントとして捉えて頂ければと思います。
① タスク間の依存関係を整理する
プロジェクトで生じるタスクは、それ単独で存在することは殆どなく、多くの場合、他のタスクと何かしらの依存関係を持ちます。
依存関係の例として、前のタスクが完了することで後続のタスクを開始できる場合や、後続のタスクを開始することで前のタスクが完了できる場合などが挙げられます。
そのタスクを開始するには(或いは完了するには)、どのタスクがどういう状態になっている必要があるか?というタスク間の依存関係をしっかり整理することで、整合性のあるマスタースケジュールを作成できます。
② マイルストーンとタスクを整合させる
マイルストーンとは、プロジェクト中に発生する、遅延できない重要な節目やイベントのことです。
プロジェクトにおけるマイルストーンの例として、ステコミ、中間報告、システムカットオーバーなどが挙げられます。
通常、各マイルストーンでは、それまでに完了することが必要なタスクや成果物(或いは中間成果物)が存在しますので、マスタースケジュールの作成時は、マイルストーンを整理し、そのマイルストーンまでに必要なタスクが完了するようなタイムラインとなっていることが重要です。
③ クリティカルパスを特定し、安全策を講じる
クリティカルパスとは、マイルストーンやプロジェクトの完了(例えばシステム導入プロジェクトであれば、システムの本稼働)のスケジュールに直接影響する一連のタスクのことです。
クリティカルパスにある一連のタスクのうち、いずれかのタスクが遅延すると、後続のタスクはもとより、マイルストーンやプロジェクト完了も遅延してしまいます。
従い、マスタースケジュール作成においてクリティカルパスを特定し、その上にあるタスクが遅延しないよう、優先的にリソース配分したり、ある程度バッファを置いたり、作業着手を前倒しするなどの安全策を講じることが必要です。
④ プロジェクト外の取組も考慮する
企業内では常に様々な取組が行われており、基本的にどのようなプロジェクトでも、自身のプロジェクトの進捗やアウトプットが、そのプロジェクト外で行われている他の取組に何かしら影響を与えます。
(或いは、自身のプロジェクトが、他の取組の進捗やアウトプットの影響を受けます)
従って、プロジェクトを推進するには、その外側で行われている取組とも連携する必要があるので、自身のプロジェクトの範疇内だけでマスタースケジュールを検討するのではなく、連携すべき他の取組として何があるかを把握し、その取組との整合性も加味したうえで、自身のプロジェクトのマスタースケジュールを作成することが必要です。
⑤ 現実的なタイムラインでスケジュールを引く
マスタースケジュール作成時に陥りがちなこととして、各タスクのタイムラインを短く設定しすぎてしまい、後々にスケジュールの遅延が頻発してしまうということがあります。
勿論、最初から完璧なタイムラインを設定することは困難ですが、例えば、各タスクの具体的な作業や段取を想像してみる、有識者に聞いてみる、少しやってみることで必要な工数感を得ること等により、より現実的なタイムラインに近づけることができます。
また、人員の欠員や前タスクの遅延等といった不測の事態が生じる場合もあるので、各タスクのタイムラインに、例えば数日程度のバッファを設けておくことも、遅延回避策の1つになります。
マスタースケジュールの具体的イメージ
最後に、システム導入終盤におけるタスクを例として、マスタースケジュールをドキュメント化した際のイメージを紹介します。(ドキュメント化に際するポイントも並記しています)
マスタースケジュールの書式や、実際のタスク及びタイムラインはプロジェクトによって異なりますので、イメージを掴むための参考として頂ければと思います。
なお上記の例ある、業務マニュアル、テストシナリオ及びUAT、課題対応(課題管理表)、稼働判定に関するポイントや具体的な業務内容は以下の記事で紹介しているので、こちらも是非ご覧頂き、理解を深める一助にして頂ければと思います。
この記事で紹介する内容は以上です。
少しでも参考になれば幸いです。